1. はじめに
個人事業主として独立を考えている人の中には、親と同居している場合や、夫婦で暮らしている場合に「扶養に入れるのか?」「扶養に入ったほうが得なのか?」と疑問を持つ方も多いでしょう。
本記事では、親の扶養に入る場合、配偶者の扶養に入る場合の条件やメリット・デメリットを詳しく解説し、個人事業主としてどのような選択をすべきかを考察します。
2. 扶養制度とは?
扶養には、以下の2つの側面があります。
(1) 税制上の扶養(所得税・住民税)
税制上の扶養とは、一定の条件を満たす親族を扶養に入れることで、扶養する人(親や配偶者)の所得税や住民税が軽減される制度です。
(2) 健康保険の扶養(社会保険)
健康保険の扶養とは、扶養に入ることで、健康保険料を支払わずに被保険者(親や配偶者)の健康保険に加入できる制度です。
この2つの扶養は、それぞれ異なる基準で判定されるため、税制上の扶養に入れる場合でも、健康保険の扶養には入れないケースがあることに注意が必要です。
3. 親や配偶者の「税制上の扶養」に入れる条件
(1) 所得要件(税制上の扶養の条件)
税制上の扶養に入るためには、年間の合計所得が48万円以下(給与所得のみの場合、年収103万円以下)であることが必要です。
✅ 扶養に入れる所得の基準(年間)
所得の種類 | 扶養に入れる条件 |
---|---|
給与所得(会社員など) | 103万円以下 |
事業所得(個人事業主) | 48万円以下(※経費を差し引いた後の所得) |
その他の所得(不動産所得など) | 合計所得が48万円以下 |
個人事業主の場合、「売上」ではなく「所得(売上-経費)」が48万円以下であれば扶養に入ることができます。
例えば、売上が100万円あっても、経費として60万円かかった場合、所得は40万円となるため、税制上の扶養に入ることが可能です。
(2) 扶養控除のメリット
親や配偶者があなたを扶養に入れると、扶養控除が適用され、税負担が軽減されます。
✅ 扶養控除額(1人あたり)
- 一般の扶養親族(16歳以上)→ 38万円
- 特定扶養親族(19歳以上23歳未満)→ 63万円(※大学生など)
- 同居老親(70歳以上の親)→ 48万円または58万円
4. 親や配偶者の「健康保険の扶養」に入れる条件
健康保険の扶養に入るためには、以下の条件を満たす必要があります。
(1) 年収要件(健康保険の扶養の条件)
✅ 年間収入130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満)であること
- 事業所得の場合、「所得」ではなく「収入(売上)」で判定されるケースが多い
- 加入している健康保険組合によっては、より厳しい基準を設けている場合もある
(2) 収入が130万円未満でも扶養に入れないケース
個人事業主の場合、以下の条件に当てはまると扶養に入れないことがあるので注意が必要です。
✅ 事業専用の屋号を持っている
✅ 青色申告で専従者給与を支払っている
✅ 事業を本格的に運営していると判断される
健康保険の扶養に入るためには、**あくまで「生計を維持してもらっている立場」**である必要があります。
事業を本格的に行っていると判断されると、たとえ所得が低くても健康保険の扶養には入れないことがあります。
5. 扶養に入るメリット・デメリット
(1) 扶養に入るメリット
✅ 税負担や社会保険料の負担を軽減できる
✅ 健康保険料を支払わずに済む(健康保険の扶養に入れた場合)
✅ 開業初期の収入が不安定な時期に助かる
(2) 扶養に入るデメリット
⚠ 所得が増えると扶養から外れるため、税負担が急に増えることがある
⚠ 健康保険の扶養に関しては、個人事業主だと厳しく判断される場合がある
⚠ 青色専従者給与を受け取る場合は、そもそも扶養に入れない
6. 扶養に入るべきか?判断基準
(1) 開業初期で所得が少ない場合 → 扶養に入るのが有利
✅ 年間所得が48万円以下なら、税制上の扶養に入れる
✅ 年間収入が130万円未満なら、健康保険の扶養に入れる可能性あり
✅ 税負担を軽減しながら、事業を安定させるのが得策
(2) 事業が軌道に乗り、所得が増えてきた場合 → 扶養を外れるのがベター
✅ 所得が48万円を超えると、税制上の扶養を外れる
✅ 収入が130万円を超えると、健康保険の扶養から外れる
✅ 国民健康保険・国民年金に加入し、自立した経営を目指す
7. まとめ
個人事業主として開業する場合、開業初期は扶養に入ることで税負担を抑えられるメリットがあります。しかし、所得が増えてくると、扶養から外れるタイミングを見極めることが重要です。
✅ 扶養に入るべきかどうかのポイント
- 所得が48万円以下(事業所得)なら税制上の扶養に入れる
- 収入が130万円未満なら健康保険の扶養に入れる可能性あり
- 事業が本格化してきたら、扶養を外れ国民健康保険・年金に加入する
扶養の条件を理解し、自分にとって最適な選択をすることが、個人事業主として成功するための第一歩です。
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